2018年 03月 27日

英語の新しい学び方「CLIL(内容言語統合型学習)」とは?

CLILってなあに?

CLIL(Content and Language Integrated Learning、内容言語統合型学習、クリル)は、内容(社会や理科などの教科ないしは時事問題や異文化理解などのトピック)と言語(外国語)の両方をあわせて教育する外国語の学習方法です。
例えば、環境問題について学習者どうしが協力的に学び、考えながらその内容につながるキーワードやキーセンテンスとなる英語を学ぶといったものです。

ヨーロッパで始まり、日本でも最近注目されている学習方法であり、耳にしたことのある先生方も多いのではないでしょうか。

CLILの10の原則

CLILでは、次の10原則を満たすように教材を準備し、指導します。

CLILの10の原則

1 内容学習と語学学習の比重は1:1である。
2 4技能(読む・聞く・書く・話す)をバランスよく統合して使う。
3 タスクを多く与える。
4 さまざまなレベルの思考力(暗記、理解、応用、分析、評価、創造)を活用する。
5 協同学習(ペアワークやグループ活動)を重視する。
6 異文化理解や国際問題の要素を入れる。
7 オーセンティック素材(新聞、雑誌、ウエブサイトなど)の使用を奨励する。
8 文字だけでなく、音声、数字、視覚(図版や映像)による情報を与える。
9 内容と言語の両面での足場(学習の手助け)を用意する。
10 学習スキルの指導を行う。

*和泉伸一・池田真・渡部良典(2012年)『CLIL(内容言語統合型学習)上智大学外国語教育の新たなる挑戦 第2巻 実践と応用』Sophia University Press 上智大学出版

CLILで授業を行う利点は?

CLILで授業を行うことには、以下のような利点があるといわれています。

CLILで授業を行う利点

1 中身のある内容やオーセンティックな教材により、学習への動機づけが高まる。
2 異文化意識が育つことで、国際社会に参加するための英語習得という「統合的動機(受験勉強のような「道具的動機」に対する概念)」が生まれる。
3 意味のある豊かなインプットが与えられる。
4 英語を使って学ぶので、インタラクションやアウトプットを行う必然性が生まれる。
5 聞く・読む・話す・書くを有機的に統合できる。
6 深い思考を伴うので、言語知識が記憶に定着しやすい。
7 文字、音声、数字、視覚など多様な知能(multiple intelligences)に訴えるので、さまざまな学習スタイルに適合しやすい。

*和泉伸一・池田真・渡部良典(2012年)『CLIL(内容言語統合型学習)上智大学外国語教育の新たなる挑戦 第2巻 実践と応用』Sophia University Press 上智大学出版

このような利点から、小学校で英語をCLILで指導される先生方も増えてきています。また、最近では語学教育関連の民間企業もCLILを導入し始めています。
教科書や辞典などにもCLILに紙面が割かれるなど、少しずつですが学習者にも認知度が高まっています。

いいことずくめのように思われるCLILですが、その効果を得ることは簡単ではありません。このCLILの利点を生かすためには、授業で扱うのに適した素材を探し、研究し、必然性のある英語表現を盛り込んだ指導案を作成しなければなりません。
また、その指導法自体を先生方自身が身につけていく必要もあります。そのためには時間と労力がかかり、学校の先生方には大変な負担となってしまいます。

そこで、CLILを始めてみるきっかけとなる素材集として、『英語で学び、考える 今日は何の日 around the world』をご紹介します。

CLILの授業の素材にぴったり! 『英語で学び、考える 今日は何の日 around the world』

1.『英語で学び、考える 今日は何の日 around the world』とは?

『英語で学び、考える 今日は何の日 around the world』は、世界のトピック(記念日や歴史的な出来事)を「平和」「人権」「環境」「異文化理解」の4つの観点で取り上げ、紹介した本です。
トピックを通じて世界の課題について学びながら、関連する英語表現が学べます。

トピックを月ごとに一覧にした「トピックページ」と、1つのトピックを取り上げて詳しく解説した「ピックアップページ」で構成されています。
特に「ピックアップページ」では、国際連合(以下、国連)が世界のさまざまな問題の解決に向けて、世界中で協力しようとよびかけ、その取り組みをうながすために制定した「国際デー」を多く取り上げています。

2.「ピックアップページ」とは?

「ピックアップページ」では、取り上げた記念日について基礎的な知識と関連する英単語、キーフレーズを紹介しています。また、その知識や考えを深めるための問いかけや活動を紹介しているので、クラスで意見を交わしながら内容理解を深めると同時に、英語を学ぶことができます。
さらに詳しく紹介しましょう!

■「どんな日?」では、記念日の概要や制定されるに至った背景などを日本語で解説しています。

■「Words&Expressions」では、その記念日に関する言葉や表現を英語で紹介しています。言葉や表現は、下の問いかけの答えとしてより自然と思われる形で示しています。

■「Let’s think!」では、トピックに関連して、簡単な英語を使ったクイズや問いかけを載せています。答えを考えることで、トピックについての理解が深まります。また、ペアになったり、グループを作ったりして、アイデアを交流することもできます。

■「Let’s act it out!」では、以上を踏まえて、簡単な英語を使って自分の考えや意見を発表するためのさまざまな活動を紹介しています。

3.こんなところがCLILに最適!

『英語で学び、考える 今日は何の日 around the world』は、CLILで活用するのにぴったりな素材です。その理由は、次の①~⑥です。

①「どんな日?」では、記念日の概要を日本語で解説しているので、英語だけでなく、内容もきちんと把握して学習できる。
②国連の制定する「国際デー」を多く扱っており、国際的な問題について考えたり、異文化についての理解を深めたりすることができる。
③国際デーについての情報は、国連のウェブサイトなどからも得ることができるので、補足として、子どもたちの実態に合わせたオーセンティックな(本物の、現実の)資料を用意することができる。
④写真やイラストを豊富に使用している。
⑤「Words&Expressions」で「暗記・理解」、「Let’s think!」で「理解・応用・分析・評価」、「Let’s act it out!」で「評価・創造」といったさまざまな考えるタスクを与えることができる。
⑥「Let’s think!」や「Let’s act it out!」では、協同で学習に取り組むことができる。

『英語で学び、考える 今日は何の日 around the world』の内容を子どもたちの実態にあわせてアレンジし、CLILとしての外国語活動や外国語の授業づくりに生かしてみるのはいかがでしょうか。これまで以上に子どもたちが主体的に取り組め、深まりのある外国語の授業へと変えていくことができるでしょう。

(指導:町田淳子)

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